2022年04月22日

  2022年 第 15 週(2022/4/11~2022/4/17)

【今週の注目疾患】
≪アメーバ赤痢≫
 2022 年第 15 週に県内医療機関より 1 例のアメーバ赤痢の報告があり、2022 年の累計は 3 例となった。
3 例ともに女性であり、40 代が 2 例と 30 代が 1 例であった。
病型は全て腸管アメーバ症であった。

 県内のアメーバ赤痢は、2012 年から 2022 年第 15 週までに 468 例の報告があった。
2013 年に過去 10 年間で最多の 66 例となり、その後は年間 40~50 例程度で推移し、2020 年以降は減少傾向となっている。

 468 例のうち、男性は 403 例(86%)、女性は 65 例(14%)で 8 割以上を男性が占めていた。
年代別では、男性は 40 代が 107 例(27%)と最も多く、次いで 50 代が 98 例(24%)、60 代が92 例(23%)であった。
女性も最も多いのは 40 代 23 例(35%)であり、次いで 30 代が 10 例(15%)であった。
 病型別では腸管アメーバ症が 422 例(90%)、腸管外アメーバ症が 37 例(8%)、腸管および腸管外アメーバ症が 9 例(2%)であった。
 推定される感染地域は、国内が 362 例(77%)と最も多く、国外は 60 例(13%)、国内または国外が 8 例(2%)、不明は 38 例(8%)であった。
 推定される感染経路は、男女ともにその他・不明が最も多く、男性 206 例(51%)、女性 37 例(57%)であった。
次いで経口感染であり、男性 110 例(27%)、女性 18 例(28%)であった。
経口感染の推定感染源として、水、野菜や魚介類の生食のほか、介護等における便処理等の記載があった。
性的接触は男性 87 例(22%)、女性 10 例(15%)であった。
男性は異性間性的接触が51 例と同性間性的接触17 例より多く見られた。
女性では 10例全て異性間性的接触であった。

 アメーバ赤痢は寄生性の原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による消化管感染症である。
赤痢アメーバは、嚢子(シスト)として感染者の糞便に排泄され、感染を起こす。
シストは小腸で脱嚢して栄養型となり、大腸粘膜面に潰瘍等の病変を起こす。
感染者のうち 5~10%が発症する。
粘血便、下痢、テネスムス(便意があるが排便はない)、腹痛などの赤痢様症状を起こす(腸管アメーバ症)。
栄養型が血行性に肝臓、肺、脳、皮膚などに転移すると、膿瘍を形成し、重篤な症状を呈する(腸管外アメーバ症)1)。

 潜伏期は 2~3 週間とされるが、数ヶ月~数年に及ぶこともある。
肝膿瘍などの合併症を伴わない限り、発熱はまれである。
下痢による発症は一般に緩徐であり、程度も粘血が混ざる 1 日 2~3回程度のものから、テネスムスを伴い 1 日に 20 回以上の粘血便を示すものまで多彩である。
肝膿瘍の場合、主な臨床症状は発熱、上部腹痛、肝腫大などであり、最も多く見られるのは発熱である。
アメーバ性肝膿瘍の 50%は下痢や粘血便などの腸管症状を伴わない2)。

 感染経路は、シストに汚染された食品や水を摂取することにより感染する経路と性的接触により感染する経路がある3)。
 食品や水の摂取による感染対策については、特に上下水道のインフラが整っていない地域に渡航する際には、清潔な食品や水の確保、手指衛生に留意することが重要である。
 国立感染症研究所によると、我が国の国内感染例の多くは性的接触による感染である。
従来、男性同性間性的接触による感染が注目されてきたが、近年では異性間性的接触を原因とする症例の報告が増加してきた。
性的接触(経口-肛門性交渉等)によるシストの経口摂取など性行為の多様化により生ずる感染リスクに注意する必要がある。
また、無症状病原体保有者(無症状シストキャリア)の報告も増加している。
無症状シストキャリアは届出対象ではないが、潜在的な感染源として、またアメーバ赤痢への劇症化リスクを減らすためにも、治療することが重要である1)。

■参考
1)国立感染症研究所:アメーバ赤痢 2007 年第 1 週~2016 年第 43 週
  IASR Vol.37 2016 年 12 月号
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:アメーバ赤痢とは
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:性感染症としてのアメーバ赤痢の国内疫学,
  2000~2013 年 IASR Vol. 37 2016 年 12 月号
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年4月20日更新)