2021年10月22日

今週の注目疾患  
2021年 41週(2021/10/11~2021/10/17)
【今週の注目疾患】

≪腸管出血性大腸菌感染症≫

 2021 年第 41 週に県内医療機関から腸管出血性大腸菌感染症が 7 例報告され、2021 年の累計は110 例となった。
報告された 7 例のうち、性別では女性 4 例(57%)、男性 3 例(43%)であり、年代別では 10 歳未満が 3 例(43%)と最も多くみられた。
そのうち 2 例は溶血性尿毒症症候群(以下、HUS)を発症した重症例であった。
いずれも 5~9 歳の男児であり、O 抗原・毒素型は O157・VT1VT2 と O157・VT 型不明であった。
 HUS の届出は本年初であり、2017 年以降、県内では計 21 例が報告されている。
21 例のうち、年代別では 0~4 歳が 6 例(29%)で最も多く、次いで 5~9 歳が 5 例(24%)、15~19 歳が 3 例(14%)であった。
O 抗原別では血清型が確認できた 12 例のうち 8 例(67%)を O157 が占めており、毒素型ではベロ毒素が検出された 12 例のうち VT2 が 5 例(42%)、VT1VT2 が 4 例(33%)と VT2産生株が大部分を占めていた。

 腸管出血性大腸菌感染症は、無症状から、頻回の水様便、激しい腹痛、著しい血便とともに HUSや脳症などの重篤な合併症を起こし、時には死に至るものまで様々である。
 HUS は血栓性微小血管炎による急性腎不全で、①破砕状赤血球に伴う貧血、②血小板減少、③腎機能障害を 3 徴とする。
腸管出血性大腸菌感染症に伴う HUS は、下痢などの初発症状発現の数日から 2 週間以内(多くは 5~7 日後)に発症することが多い。
激しい腹痛や血便を示す典型的な出血性大腸炎の症例の約 10%に発症する可能性があるが、稀に血便症状がなくても起こる。
注意すべき症状としては、顔色不良、乏尿、浮腫、意識障害などがある1)。
致命率は 1~5%程度とされる2)。
 乳幼児や高齢者は、重症合併症を起こしやすいとされており1)、特に県内においては 10 歳未満の乳幼児の HUS 症例が多くみられていることから、これらの年代の罹患には注意を要する。
 感染経路は汚染された食品もしくは手指を介した経口感染である。
予防として、生肉または加熱不十分な食肉類は喫食しない、調理器具類の洗浄・消毒の実施、石けんと流水で手をよく洗うことが重要である1)。

■参考
1)厚生労働省:一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:腸管出血性大腸菌とは
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年10月20日更新)