2021年07月30日

今週の注目疾患   2021年 29週(2021/7/19~2021/7/25)
【今週の注目疾患】

【腸管出血性大腸菌感染症】
 腸管出血性大腸菌感染症は 2021 年 29 週に 5 例の届出があった。
2021 年の累計は 66 例となり、29 週までの累計としては、過去 5 年間で 2 番目に多い。
 分離菌の血清群・VT 型別では O157VT1VT2 が 3 例、O157VT2 が 1 例、血清群不明 VT1VT2 が 1 例であり、すべて VT2 産生株(VT1VT2 もしくは VT2 単独、以下同じ)であった。
 腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素(VT)は、その種類によって重症度に違いが見られ、VT2 産生株は VT1 単独産生株と比較して、有症状者の割合や血便を呈する患者の割合が高い傾向にある。
国の報告によると、溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併した症例 79 例のうち腸管出血性大腸菌が分離された 50 例中 47 例(94%)の毒素型が VT2 産生株であった 1)。
2021 年に届出のあった血清群 O157 37 例のうち、VT 型が判明した 34 例すべてが VT2 産生株であったことから更なる注意が必要である。
 感染経路(推定含む)別では経口感染が 16 例(31%)、接触感染が 13 例(25%)、不明が 23 例(44%)であった。
経口感染の推定原因食品としては、焼き肉やローストビーフがあった。
接触感染では、家族間の感染が 13 例中 12 例と主であった。
 腸管出血性大腸菌感染症の症状は幅広く、感染しても無症状の場合もあれば、一方で溶血性尿毒症症候群(HUS)を続発して死亡あるいは腎機能障害などの後遺症を残すなど様々な病態をとりうる。
典型例では 3~5 日の潜伏期を経て、激しい腹痛をともなう頻回の水様便の後に血便がでる。
また 37~38℃台の発熱や嘔吐を伴うこともある。
感染経路は主にベロ毒素産生性の腸管出血性大腸菌に汚染された食品を摂取することによる経口感染と接触感染による二次感染である 2)。
 県では夏季における食中毒発生防止のため、2021年7月20日から食中毒警報を発令しており、注意を呼び掛けている 3)。
腸管出血性大腸菌はわずかな菌数でも感染が成立する。
食品の調理時における野菜など非加熱食品の十分な洗浄、肉類の十分な加熱や生肉の喫食の回避、調理器具類の洗浄、消毒等、基本的な衛生対策が重要である。
家庭内で患者が発生した場合には、接触感染による二次感染を防ぐため、手洗いを励行することが重要となる。
 また、腸管出血性大腸菌感染症は東京オリンピック・パラリンピック競技大会期間中における強化サーベイランスの対象疾患とされており、県においても発生動向を注視しているが、現時点では通常以上の集積や大会関連と思われる症例は確認されていない。

■参考
1)国立感染症研究所 腸管出血性大腸菌感染症 2016 年 4 月現在
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所 腸管出血性大腸菌感染症とは
>>詳細はこちら
3)千葉県 食中毒関連情報
>>詳細はこちら


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年7月28日更新)